飲食店社員の悩みの一つに
休憩時間なのに休憩ができない
ということがありますよね。
店は営業時間ではなく準備中の札をしていても、予約電話や業者さんの出入りなどの対応をしなければならない。
酷ければ、営業しながら休憩(まかないを食べる)なんていうことも。
これって法律上は休憩になるの?
そんな疑問もわいてくると思います。
絶対に電話がかかってきたり訪問者がやってくるわけではないけれど、気が休まらないし、ちょっと出かけたくても自由に店を離れることもできない。
結論から言うと
手待ち時間は労働時間とみなされます。
つまり賃金の支払い対象になるということです。
この記事では、手待ち時間のいろんなケースや、会社への対処法などを、3分以内でわかりやすく説明していきたいと思います。
飲食の社員は休憩時間をまともにとれない
飲食業を転々として、いろんな業態で働いてきた筆者ですが、たしかにまともに休憩できる会社は少なかったと思います。
大手であろうが、個人経営の小さな居酒屋であろうが、休憩時間関係なくかかってくるのが、予約の電話です。
営業中の休憩で、他の社員やアルバイトが対応してくれるならいいのですが、特に嫌だったのが、ランチ営業のある小さな居酒屋で働いていたときです。
休憩時間は、ランチ営業が終わって後片付けをした後の15時~16時。
午前中に出勤して夜中まで働くわけですから、休憩時間は仮眠をとりたいわけです。
それなのにウトウトしたとき、もしくは熟睡中に電話の音で目が覚める。
これはかなり苦痛でしたね。
営業時間をさけて電話をしてくるお客さんも多いので、休憩時間は”予約電話がかかってきやすい時間帯”でもあるのです。
しかもたまにくだらない営業電話もかかってくるので、これには殺意さえ覚えます。
その他にも、飲食業ならではの”手待ち時間”をまとめてみました。
ランチ客が居座る
もうすぐラストオーダーの時間。
看板を店に入れようと思ったら、お客さんが入ってくる。
ぶっちゃけ、こういう時に入ってくる人って面倒な客の可能性が高いんですよね。
「〇時で閉店ですけど、大丈夫ですか?」
と声掛けをして、注文を受けたにもかかわらず、案の定時間になっても帰る気配がない。
おのずと休憩時間は短くなってしまうのです。
業者さんが出入りする
飲食店だと、小さい店であっても、いくつもの業者さんが毎日納品にやってきます。
休憩時間にやってくる業者さんもいるわけです。
そうなると納品書にサインをしないといけないし、商品が多い業者さんの場合は納品チェックをしなくてはいけません。
何かと店に入ってくる人がいる
店の電気を消して、準備中の看板を出す。
明らかに営業をしていないことがわかるはずなのに、なぜか入ってくる人がけっこういるんですよね。
来店を考えているので、メニューについて教えて欲しいというような人や、宴会の予約をするような人も多いですし、飛び込み営業で入ってくる人もいます。
ひどい人だと、飲み物だけでいいから飲ませてくれなんていう人も、入ってくるので困ったものです。
予約が多いと、休憩を早く切り上げる
通常通り休憩が終わってからの仕込みでは、間に合わない予約が入ることも多々あります。
居酒屋の忘年会シーズンなんて、しょっちゅうです。
そんなときは、休憩時間を早めに切り上げて、仕込みをはじめないといけないので、休憩時間が削られるわけです。
手待ち時間は休憩時間ではなくて労働時間です
一応は休憩時間が決まっていて、何の用事もなく休めることもある。
休憩の時間をずっと寝て過ごした。
では、予約の電話がかかってきた時や、業者さんがきたり、お客さんが入ってきたりしたときに、対応しなくてもいいのか?
ここがポイントになります。
もし対応しなくてもいいのなら、それは休憩時間です。
逆に業務が発生したときに、対応しなくてはいけない待機している状態であれば、たとえ寝ていたとしても、漫画を読んでいたとしても、それは手待ち時間であり、労働基準法上では休憩時間に当たらないので、賃金が発生することになります。
Q 私の職場では、昼休みに電話や来客対応をする昼当番が月に2~3回ありますが、このような場合は勤務時間に含まれるのでしょうか?
A まず“休憩時間”について説明します。休憩時間は労働者が権利として労働から離れることが保障されていなければなりません。従って、待機時間等のいわゆる手待時間は休憩に含まれません。
ご質問にある昼休み中の電話や来客対応は明らかに業務とみなされますので、勤務時間に含まれます。従って、昼当番で昼休みが費やされてしまった場合、会社は別途休憩を与えなければなりません。参照元:厚生労働省の労働基準法に関するQ&A
また賃金が発生するだけではなく、会社は労働基準法で定められている休憩時間を、労働者に与えていないということにもなります。
Q 休憩時間は法律で決まっていますか?
A 労働基準法第34条で、労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない、と定めています。参照元:厚生労働省の労働基準法に関するQ&A
これに違反すると、労働基準法119条により、雇用主は「30万円以下の罰金または6カ月以上の懲役」が科せられる場合もあるのです。
休憩時間に業務をしなければならない時の対処法
もし自分の休憩時間が、電話番や店番などの手待ち時間に当たる場合、どうやって対処すればいいのでしょうか?
対処法としては大きく分けて以下のように考えられます。
・改善するように直接交渉する
・労働基準監督署に相談する
・労働時間としての賃金を請求する
労働基準法で定められた法を遵守させることは、労働者としての当然の権利であり、わがままではないので、臆することなく行動に移せばいいでしょう。
具体的にもう少し詳しく説明していきます。
会社に改善を求める
いちばん当たり前ではありながら、行動に移しづらいのがこの方法です。
予約の電話など、売り上げにつながることを拒否するわけですから、会社から「やる気がない」と捉えられるかも知れませんが、それとこれとは別の話だということを、わからせなければいけません。
会社が話を聞いてくれる環境であったり、従業員みんなで交渉できるのなら、改善を要求してみましょう。
労働基準監督署に相談する
話を聞いてくれるような会社ではない場合や、交渉がこじれたり、交渉によって不利益が生じた場合には、労働基準監督署に相談して指導してもらうことになります。
先ほどの繰り返しになりますが、休憩時間が手待ち時間である場合は、労働基準法第34条に定められた休憩を、与えていないことになり、罰則の対象にもなるのです。
休憩時間に業務を行った記録などをとっておいたり、交渉したときの会社の言い分を録音するなどしておくといいかも知れませんね。
とにかく会社が言い逃れをできないように、証拠をそろえておく準備はしておいた方がいいでしょう。
休憩時間分の賃金を請求する
労働基準監督署に相談をするのは、あくまでも労働基準法に違反していることの報告であって、賃金を払うように指導してくれることはあっても、代わりに請求してくれるわけではありません。
休憩時間に業務を行っていたという証拠が揃っているのなら、いきなりその時間の賃金を請求するというのもアリだと思います。
その会社に長居するつもりでなければ、これだけ行えばいいのではないでしょうか。
手待ち時間の請求額を計算する方法
ここでは例として、手待ち時間の請求額を、簡易的に計算してみましょう。
基本的には、給料から割り出した時給を、手待ち時間とかけて計算することになりますが、ここでは時給を1,000円、手待ち時間は毎日1時間で週1回の休みとします。
例)
時給:1,000円
手待ち時間:1時間
休日:週1回(年間休日52日)
労働時間が8時間までなら、通常の時給1,000円になりますが、休憩時間を入れると9時間以上になると思うので、残業の割増賃金(×1.25倍)の1,250円で計算したいと思います。
「1,250円×1時間×(365日-52日)」で1年間の手持ち時間に対する賃金が計算できますよね?
答えは391,250円です。
過去2年分まで請求できるので、2年以上働いているのであれば、×2で782,500円請求できるということになります。
これだけもらえるのなら、請求しない手はないですよね。
まとめ
労働基準法では、労働時間に応じて休憩を与えないといけないことになっています。
6~8時間:45分以上
8時間を超えた場合:1時間以上
ですが、すべての業務をほったらかしに出来る状態でなければ、法律上は休憩時間とはみなされません。
ポイントは、その時に休んでいたかどうかではなく、電話や訪問者があった場合に対応しなければいけない状態であるかどうかということです。
もし労働基準法に基づいた休憩時間がとれていないのであれば、会社に改善させる必要があります。
応じなければ、労働基準監督署に相談しましょう。
過去2年分の賃金を請求するのも忘れずに!