飲食業で働いていて、正社員ではない故に、待遇に差を付けられて、働く意欲を失ってしまっている契約社員の人に朗報です!
労働環境の悪い飲食業では、契約社員だからといって不利になっていたこともあるかも知れませんが
「パートタイム労働法」が2020年4月(中小企業は2021年4月)に新しく生まれ変わるのです。
アルバイトやパートだけでなく、契約社員も対象となり、同一労働・同一賃金が実現されることになりました。
基本給や賞与も正社員と同じに!
中小企業とは
飲食業では、資本金5,000万円以下または、従業員100人以下が中小企業に当たります。※それ以上は大企業
いつもながら中小企業は後回しなのが気になりますが、どちらにしてもみんなが知っておく必要がある法律です。
とはいえ、けっこう複雑でボリュームのある内容なので、できるだけカンタンに要点をまとめて説明していきたいと思います。
契約社員もパートタイム労働者です

日本では労働者の名称がたくさんあるので、わかりにくいですが、いわゆる正社員ではない人を、まとめて”パートタイム労働者”と呼ぶようになりました。
契約社員、パート、アルバイトや、派遣社員、準社員、基幹社員、臨時社員、嘱託社員など、週の労働時間が正社員よりも短い人は、フルタイムで働いていたとしても、パートタイム労働者と定義されたのです。
つまり正社員以外は「パートタイム労働法」の対象になると考えてもいいでしょう。
なぜパートタイム労働法が施行されるのか
世の中には圧倒的に正社員の方が多いイメージがありますが、2018年の厚生労働省の調査では、実に1,817万人もの人がパートタイマー労働者として働いています。
その中の約7割が女性なのですが、時代背景などからか、男性の数が増えてきたこともあり、全体の数は増加する傾向にあるようです。
雇用する側が、労働者を都合よく使うために、正社員を採用しなくなってきてるわけですね。
でも労働者側にしてみれば、正社員と同じように働いているのに、待遇に差を付けられれば、当然不満が出てきます。
正社員になれる希望がなければ、働く意欲すら湧かないでしょう。
そこで「働き方改革関連法」の一環として、成立したのが今回の「パートタイム労働法」です。
同一労働・同一賃金
正社員との、不合理な待遇の差をなくし、誰もが能力を発揮して働ける環境「公正な待遇の実現」を目指すために、「パートタイム労働法」は施行されるのです。
パートタイム労働法で何が変わる?

ここからは「パートタイム労働法」を具体的に説明していきたいと思います。
正確には「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」という長い名称があり、「パートタイム・有期雇用労働法」とも呼ばれます。
2020年の4月(中小企業は2021年の4月)に改正されるわけですが、大きく3つのポイントがあります。
1. 不合理な待遇差の禁止
2. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
3. 行政による指導や解決手続の整備
1、不合理な待遇差の禁止
同じ会社において、正社員とパートタイマーに、基本給やボーナスなどのあらゆる待遇面で不合理な待遇差が禁止されます。
2、労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
労働者は”待遇差がある”と感じた場合は、事業主にその理由の説明を求めることができ、事業主は説明をすることが義務となります。
3、行政による指導や解決手続の整備
裁判でなければ解決できないことを縦に、事業主がルールを守らないことがないように、裁判以外で解決する手段である「行政ADR(裁判外紛争解決手続)」を整備します。
・パートタイマーを差別しちゃダメ!
・待遇差があるときは、責任者に理由を問いただしてもよい。
・泣き寝入りせずに、解決する手段はある。
ということです。
正社員にボーナスを与えているのなら、契約社員にも与えないといけないし、これまでのように「うやむやにしていればいいだろう。」は通らなくなるわけです。
その他にも、抑えておきたい2つのポイントをまとめました。
雇う際に、労働条件を説明しないといけない

雇い入れのときに、説明がなくて、疑問を持ったまま働くことになると、トラブルが生じやすくなるため、特に4つの項目については、文書の交付などによって明示しなくてはいけません。
・昇給の有無
・退職手当の有無
・賞与の有無
・相談窓口
違反した場合には、10万円以下の過料の対象となり、労働基準法の30万円以下の罰金の対象になる場合もあります。
労働基準法では、パートタイム労働者も含めて、労働者との労働契約の締結に際して、
労働条件を明示することが事業主に義務付けられています。特に、「契約期間」「有期
労働契約を更新する場合の基準」「仕事をする場所と仕事の内容」「始業・終業の時
刻や所定時間外労働の有無、休憩・休日・休暇」「賃金」「退職に関する事項」などに
ついては、書面の交付などにより明示することが義務付けられています。(違反の場合
は 30 万円以下の罰金に処される場合があります。)※参照元:厚生労働省の資料
正社員になるチャンスを整えなければいけない

正社員になりたくても、そのチャンスに恵まれず、仕方がなく契約社員などのパートタイマーとして働いている人が多いので、正社員になるチャンスを整える義務が事業主に課せられます。
第 13 条のポイント 〔対象者:すべてのパートタイム労働者〕
事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、その雇用するパートタイム労働者につ
いて、次のいずれかの措置を講じなければならない。
① 通常の労働者を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパートタイム労働者に
周知する
② 通常の労働者のポストを社内公募する場合、既に雇っているパートタイム労働者にも
応募する機会を与える
③ パートタイム労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度を設ける
④ その他通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずる
※参照元:厚生労働省の資料
整えるという言葉を使ってはいますが、何らかのチャンスを与えないといけないということがわかりますね。
パートタイム労働法で本当に待遇は改善される?
これまで肩身の狭かった、非正規の契約社員などの待遇は、建前上おおきく改善されたことになります。
大きな一歩を踏み出したことに間違いはないでしょう。
ですが実際には、そこまで期待していいのかというと、そうとも言い切れません。

特に飲食店の場合、売り上げに対して人件費が占める割合が大きいので、事業主が人件費の幅を広げるとは考えにくいからです。
大企業ならまだしも、中小企業や個人経営では、経営的に不可能とも言えますよね。
逆に経費削減に走るのではないでしょうか。
つまりどこかに、何らかの歪みが生じることになるわけです。
全体の人件費をキープするために、正社員の給料が上がらなくなったり、賞与の額が減ったりなくなったりすることは、容易に想像がつきます。
人件費を削減して、サービス残業や休日のサービス出勤が増える店長も増えるのではないでしょうか。
また正社員と同一賃金になるということは、今まで以上に責任が重くなることにもなります。

契約社員だからといって免除されていた仕事が課せられて、働き辛くなる人が出て来るかも知れないということです。
まとめ

パートタイム労働法について、説明してきましたがいかがでしたでしょうか?
巷では、パートタイマーの給料をあげることは、現実的に難しいので、正社員がパートタイマーのレベルに下げられるのでないかという声も、多く上がっているようです。
それでも確かに”待遇差はなくなった”ということになるのかも知れませんが、全体的に下がってしまっては意味がないですよね。
中小企業においては、2021年の4月まで猶予があるわけですが、いちばん大事なのは労働者自身が「パートタイム労働法」について理解をして、声をあげていくことではないでしょうか?
そうしなければ、いつまで経っても本当の意味で労働環境が良くなることはありえないのです。